【人事管理】配偶者手当の支給とその基準
配偶者手当を支給している企業は、「平成27年職種別民間給与実態調査」(人事院)によれば、全体の69%となっています。そして、配偶者に家族手当を支給する事業所のうち、配偶者の収入による制限があるのは、84.9%で、103万円が68.8%、130万円が25.8%です。
平成30年1月から、配偶者控除等の税制改正が行われたため、給与計算時の源泉徴収事務においては、すでに法改正に対応されていると思いますが、就業規則の配偶者手当を支給する要件を「控除対象配偶者を有する社員に支給する。」等と規定している場合は、見直しの検討が必要なケースがあります。この対応はお済でしょうか。
1.税制改正による配偶者控除、配偶者特別控除
これまでは、給与所得者の所得金額にかかわらず、配偶者の所得が38万円以下であれば、配偶者控除を受けることができました。しかし、平成30年からは、給与所得者の所得が900万円 (給与の収入だけならば1,120万円)を超えると、配偶者控除が徐々に減り、所得が1,000万円(給与の収入だけならば1,220万円)を超えると、配偶者控除は受けられないことになりました。
一方で、配偶者の所得が38万円を超えても配偶者の所得に応じで計算される配偶者特別控除については対象が拡大され、配偶者の所得が123万円以下までが対象になるように改正が行われています。
以上は概略ですので、配偶者控除及び配偶者特別控除については、国税庁のホームページで確認ください。
https://www.nta.go.jp/gensen/haigusya/index.htm
2.配偶者手当の表現又は要件の見直し
配偶者手当を支給している企業が、支給要件に配偶者の所得の制限をつけて、就業規則またはそれに付属している賃金規程に規定していたとします。そして、配偶者の所得制限については、「所得税法上の配偶者控除を受ける配偶者を有する人」というような表現をしていていたら、規定を変更しないままにしておくと、配偶者手当の受給要件から外れる社員がでてきます。
このような規程の表現をしている企業においては、具体的には、社員の所得が1,000万円(給与の収入だけならば1,220万円)を超えるために平成30年から配偶者控除を受けられなくなった社員は、平成30年から配偶者手当の支給要件から外れてしまっていることになります。
これを機会に配偶者手当の要件を見直す企業もあると思いますが、配偶者手当を支給する対象者を何ら変更しないとするならば、「配偶者控除を受けられるかどうか。」という記載をやめて、次のような表現に変更することになります。
(配偶者手当)
第〇条 配偶者手当は、所得税法上の合計所得が38万円以下の生計を一にする配偶者を有する社員に支給する。
3.配偶者手当の在り方を見直すか
ところで、厚生労働省の「女性の活躍推進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会報告書」(平成28年4月)では、女性のパートタイム労働者による労働時間調整の要因のひとつに配偶者手当がある。としています。
パートタイマーは、「配偶者の企業から手当が支給されるメリットを考慮し、配偶者手当の範囲内で労働時間を調整している向きがある。」ことに注視し、今後は、労使で手当の在り方の検討が行われていくことを提案しています。そして、その検討のための現状把握と問題点等をまとめています。
この報告書には、配偶者手当を廃止して基本給等に組み入れた企業の事例も掲載されています。給与体系の改定を検討されている企業には、参考になる資料だと思います。http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000124230.pdf
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/02/13