【人事管理】台風に伴う休業の賃金等について
1. 休業手当の支払いは状況によります
この度の台風19号により被害を被った皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
さて、今回の台風は交通機関が計画運休を発表したこともあり、台風進路にあたる地域では、前日から事業の休業を決めたところが多くありました。3連休に当たりましたので、主にサービス業では事前に臨時休業を決めていたようです。
もし店舗などの施設が、直接被害を受けなかったけれども、交通機関や仕入れ先が休むことから臨時休業を決め社員を休ませた場合、賃金はどのようにするのでしょうか。
これについては、平成30年に厚生労働省が労働基準法等の解釈をまとめて公表しているものが参考になります。(文末URLのQ1-4または5を参照ください)
労働基準法第26条は、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合には、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならないとしています。
ただし、天災地変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず、休業手当の支払い義務に当たらないとしています。
ここでいう不可抗力とは、
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主は通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
これらのことから、事業の場所が直接被害を受けたために休業したときは、「使用者の責に帰すべき事由」に当たらず休業手当の支払い義務はない。としています。
一方で、直接的な被害を受けていないが、取引先や鉄道等が被害を受け原材料の仕入れ、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合は、原則として「使用者の責に帰すべき事由」と考えられるが、先ほどの、
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主は通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
の2つの要件を満たすものであったならば、「使用者の責に帰すべき事由」に該当せず休業手当の支払義務に該当しない。としています。
休業手当の支払い義務に該当するか否かは、使用者が回避を具体的に行ったかどうかや、回避することができたかどうか等を総合的に判断する必要があります。
2. 就業規則との関連など
また、就業規則を確認することも必要です。もし、天災等の場合であって事業主の不可抗力によって社員を休業させる場合であっても、通常の賃金を支払う。と規定しているような場合は、規定のとおり通常の賃金を支払う必要があります。
では、そのような規定がなく、休業を決めた状況を個別に判断し「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないと考えたときは、休業手当や賃金を支払う義務は発生しない。と考えられます。
しかし、今後の社員のモチベーションを考慮して、休業の日の賃金を控除しないで通常の賃金を支払うことを選択する企業も多いのではないかと思います。ここは、経営判断になってきます。
3. 今後の対応
今回のような勢力の強い台風は、今後も発生すると予測されますので、休業判断や賃金の対応を考えておくことが必要です。また、天災等に備えた事業継続のための対策の重要性も高まっていると思います。
以上判断においては、昨年厚生労働省が公表した資料が参考になります。(今後更新される可能性がありますのでご留意下さい)
平成30年台風21号による災害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/201809272046-1.pdf
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2019/10/15