【人事管理】有給休暇は何日前に特定させられるか
1. 有給休暇の具体的時期の指定と時季変更権
有給休暇は労働者が有する有給休暇日数の範囲内で、労働者自身が具体的に休みたい日を指定することができます。労働基準法では、客観的に「事業の正常な運営を妨げる場合」には、それを理由に使用者は時季変更することができます。一方で、事業主が時季変更を交渉しなければ、労働者の指定した日が有給休暇になります。
「時季変更」という漢字については、しばしば質問を受けますが、有給休暇の始期と終期を指定してすることが想定されているため、労基法が「時季」と表記しているといわれています。
さて、事業主は時季変更をしてもらう交渉したり、指定された日を認めた場合の代替要員手配が必要で、仕事の段取りを組む必要がありますから、数日前までに指定もらわなければ実際に運用ができません。
判例では、合理的な範囲である限りは一定期間前までに有給休暇の日数と時季(何日から何日まで休むか)を指定することを規定することは有効だとしています。(前々日までになすべしという協約規定がある場合は、年休取得者の代替要員の確保を容易にするために、就業規則に原則として前々日までになすべしと定めることが有効としました)
2.長期の有休や、オリパラ時期の有休
判例では、前々日前の指定を定めることは合理的としたわけですが、「連続して有給休暇を取りたいならば、半月前に指定してほしいと規定しておけないものか」と、相談を受けることがあります。
事前に指定をさせる期間がどれほどであれば合理的な期間となるのかは、具体的に述べられていませんので、労使でよく話し合って、有給休暇の取得の促進につながる運用をすることが望ましいと思います。
例えば、2020年のオリンピック・パラリンピック期間中は、人気の種目を多くの人が同じように見たいと思います。観戦チケットの抽選が当選している人は、すでに日程が決まっているので、事前に有給休暇の時期を指定してもらうことも可能です。
そして、観戦チケットを入手できなくても、テレビ等でリアルタイムに観戦したい人も多数いると思います。また競技場が近くにあるので、競技のある日は通勤に支障があるために休みを希望している人もいると思います。
休まずに職場でこっそり隠れて、スマホやPCの実況画像を見ている社員がいる状況も困ったことになります。
オリンピック・パラリンピックの期間に、みんなが交代で有給休暇をとれるようにスケジュール表を作って調整する準備も考えてみてはどうでしょうか。
もし、状況が許すのであれば、社内の大型画面で観戦するということも選択肢かと思います。その場合は賃金を払うか休憩時間にするかなども考えることになります。
余談ですが、過去のオリンピックの陸上競技で大記録が出ると予測されていた日は、職場の上司が許可してテレビ観戦した経験がありますが、大変よい思い出になっています。みんなで応援すると大変盛り上がります。いうまでもありませんが、職場でそうしたことが可能かどうか、よく検証して支障がなければできることだと思います。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2019/11/15