【人事管理】副業・兼業の促進に関するガイドラインが改定されました
厚生労働省は、従来から、多様な理由から副業等を推進しており、この度「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の内容を更新しました。更新された中で、おさえておきたいものに、法定労働時間外の上限時間管理方法として「管理モデル」が提示されたことがあります。
管理モデルは、副業や兼業を始める前に、もともと働いていた社員から見れば本業の会社(以下、A社と言います。)と副業等を始める勤め先の会社(以下、B社と言います。)のそれぞれの会社で働ける法定外労働時間をあらかじめ決めておくようにするものです。そうすることで、他社における労働時間を頻繁に把握しなくても法定外労働時間の上限単月100時間未満、複数月平均80時間以内となるように管理する方法です。
1. 副業等がある人の法定外労働時間の上限ルール
説明を簡易にするために、御社をA社とし社員は本業としてA社に勤務していますが、新たに、A社の仕事が終わった後に2時間の副業をB社で行いたいと申し出てきたとします。
まず、A社とB社は、自らの労働時間数については、自らの事業場で締結している36協定の1か月等や年間の延長時間の範囲内を超えることはできません。
次に、A社は、B社の労働時間を通算して管理する必要もあります。単月100時間以上又は、複数月平均80時間という上限ルールを超えない管理が必要になります。
1日の労働時間を例にして考えると、A社は所定労働時間と所定外労働時間を行う可能性があり、その後B社で労働をすることになります。
これらA社とB社の労働時間は、全部通算して、法定労働時間である1日8時間を超える時間が、時間外労働時間になります。
例えばA社で所定労働時間8時間と1時間の残業をし、B社で2時間勤務すると、
(8時間+1時間+2時間)-8時間 = 3時間 … 法定外労働時間は3時間になります。
労働基準法には、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件(労基法第36条第6項第2号及び3号)があります。先ほどの例のように計算した法定外労働時間が、単月100時間以上又は、複数月平均80時間超えになると、A社もB社も、この上限時間要件を満たさなくなり法令に抵触します。
2.所定外労働時間の把握方法
さて、他の会社における実労働時間は、労働者からの申告等によって把握し、A社とB社の企業間で連絡を取りあわなくともよいとされています。また、日々把握する必要はなく、労基法を遵守できる範囲で一定の頻度で足るとされています。例えば、
・一週間分を週末に申告させる
・他社で働く所定労働時間を把握しておき、所定労働時間外をおこなった時申告させる
・時間外労働の上限水準に近づいてきたとき申告させる 等があります。
以上は、毎日ではなくても、多少高い頻度で申告をさせる必要があり、そこで示されたのが冒頭に記載した「管理モデル」です。
管理モデルは、社員が副業等を始める前に、A社で行う法定外労働時間とB社の労働時間を合計した時間が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内になるようにA社とB社の労働時間を決めておきます。なお、管理モデルをとっても、それぞれの事業場での法定外労働時間は、36協定の延長時間の範囲内にすることと、割増賃金の支払いも必要です。
また、上限内でA社とB社の労働時間の枠組みを決めた場合は、それぞれの会社へは労働者が申告をすれば足りるとされていますので、他社にしっかり申告するように指導することが必要になります。
(労働時間は通算するため、B社の法定外労働時間は、A社とB社の労働時間の合計が、法定労働時間を超えると、割増賃金の支払いが必要です。文末のガイドラインにも解説がありますので確認をお願いします。)
詳しくは、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で確認をお願いします。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2020/09/14