コンサルタントコラム

【人事管理】テレワークと事業場外みなし労働時間制

今年の初め頃までは、なかなか導入が進まなかったテレワークでしたが、新型コロナウィルス感染症対策で、緊急的に取り入れて、その後継続している企業もあります。また、感染症第3波への対応で、これからテレワークが増えるのか、それとも一定の範囲で定着するのか動向は見守っていきたいと思います。

 

日本生産性本部の調査*によると、テレワークの実施率は5月調査では31.5%でしたが、7月調査では20.2%に低下し、10月調査では18.9%と大きな変化がなく推移しているようです。
また、テレワークの大多数を占める在宅勤務をしている人に、効率の向上と満足を調査したところ、約5割が効率が上がった又はやや効率が上がったと回答をしており、テレワークが働き方にあっている層に対して実施すると、成果がでているように思います。

*公益財団法人日本生産性本部 調査結果リポートはこちらです。
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/3rd_workers_report.pdf

 

さて、今回は、改めてテレワークと労働時間管理を取り上げたいと思います。テレワークに事業場外みなし労働時間制度がなじむのでしょうか。

テレワークとは、「情報通信機器を活用し、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」で、tele=離れた場所 とwork=働く を合わせた造語とされており、在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務等などがあります。(日本テレワーク協会)

このテレワーク協会の解説によるテレワークは、「場所や時間にとらわれない働き方」となっていますが、時間を把握する必要がないのかというとそう簡単ではありません。労働行政では、労働時間による賃金の支払いを求めているために、一定の手続きをふまなければ、労働時間の管理を行うことが基本になっています。

現在は一定の業種をのぞいては、仕事を労働時間ではかることが必ずしもベストではないと思う一方で、労基法を遵守して通達等にも配慮する必要があって、運用面で葛藤を感じます。

 

テレワークの労働時間管理として、まず考えられるのが、テレワークの日は、出勤をしていないとして、要件を満たしたうえで、事業場外みなし労働時間制を適用することです。
事業場外みなし労働時間制とは、全部または一部の時間に事業場外で勤務して労働時間を算定し難いときは、あらかじめ決めておいた労働時間を働いたとみなす(労基法第38条の2)制度です。担当している仕事を完了するために何時間かかるかをあらかじめ決めておきます。例えば1日8時間と決めておくと、テレワーク中の労働時間が把握できないけれども8時間働いたとみなすことになります。
なお、事業場外みなし労働時間制には、「事業場外で勤務して労働時間を算定し難いとき」という要件がついています。
テレワークにおける労働時間を算定し難いときの考え方については、労働基準法には規定がありませんが、行政解釈が出ており、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」によると、

①情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におかれていないこと(pcなどを通じて使用者が出した指示や呼びかけに即応しなければならない状態でないこと等)

②随時使用者の具体的指示に基づいて仕事を行っていないこと

となっていますので、テレワーク中、例えば常時アプリ等を立ち上げて上司とつながって、上司の問いかけに返答を送信することをルールにしているにもかかわらず、事業場外みなし労働時間制で運用していたとしたら、行政から事業場外みなし労働時間制の適用を否定される指導の対象になる可能性が高いと思います。

 

また、業務日報の提出を毎日義務付けていることによって労働時間の把握ができるような場合についても、事業場外みなし労働時間制で運用することは難しく、行政から否定される指導の対象になる可能性が高いと思います。

生産性が上がるテレワークを考えると、業種や職種によっては、業務の課題を与えて成果を求め自律的に労働してもらうことが適切なものもあります。そうした業種や職種であれば、労働時間を把握せずに事業場外みなし労働時間制を適用することが適していると思います。

一方で、会社へ出社したときと同じ始業時刻と終業時刻で働くことで生産性が上がる業種や職種であれば、労働時間をしっかり把握する労働時間管理の運用のほうが適していると思います。

日本テレワーク協会のページには関連情報の掲載があります。
https://japan-telework.or.jp

 

 

【コンサルタントプロフィール】

写真_大関ひろ美


大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

DATE : 2020/11/30

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