【人事管理】高年齢者の雇用状況集計から
高年齢者雇用安定法の改正(*)が令和3年4月1日に予定されています。施行後は、70歳までの就業を確保する措置を講じることが努力義務になります。
(*法改正の概要を取り上げた過去の掲載はこちらhttps://www.jinjihyouka.com/column/1199.html)
努力義務ではあるものの、将来70歳までの就業の措置が義務化になる可能性が見込まれることや、高年齢者の積極的活用を見据えて、他社はどのような制度を作っているか情報を調べたいと思っていたところ、高年齢者の雇用状況の集計(従業員31人上の企業が、毎年6月1日現在の高年齢者雇用状況を厚生労働省に提出する報告書の集計)が、2021年1月8日に公表されましたので、紹介します。
1.65歳までの雇用確保は99.9%が実施
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条1項は、定年を65歳未満に定めている企業は、65歳までの雇用の措置を①定年の廃止、②定年の引上げ、③継続雇用制度のいずれかを導入することを義務としています。さらに4月からは、70歳までの就業の措置が努力義務になります。
こうした状況の下で、65歳までの雇用確保は99.9%が実施済みと回答しています。報告書を提出している企業等の多くが法律で義務化されている水準を備えていることがわかります。
実施している制度の内訳は、「継続雇用制度」の導入が一番多く76.4%、これに続いて「定年の引上げ」が20.9%、「定年制の廃止」が2.7%です。
また、65歳までの雇用措置の20.9%にあたる定年の引上げについては、定年を65歳としている企業が30,250社で、報告した企業に占める割合は18.4%(1.2ポイント増加)となっていますので、定年を引き上げている企業の多くは定年を65歳としていることが推測できます。
2.66歳以上働ける制度は企業の33.4%
今回集計が公表された数字の元になる報告書は2020年に提出されたものですから、70歳までの就業措置が努力義務化になる前の状況下ですが、66歳以上働ける制度を33.4%の企業が用意していました。
規模別にみると、中小企業が34.0%で大企業が28.2%ですから66歳以上働ける制度は中小企業の方が高い割合になっています。
そして、希望者全員が66歳以上まで働ける企業は、報告したすべての企業に占める割合が12.7%と少なく、前年と比較して1.0ポイント増であるものの、66歳以上の雇用については、何らかの基準を設定している企業が多いことが見てとれます。
また、希望者全員が66歳以上働ける企業が採用している制度の内容を見てみると、一番多い制度が、下表のとおり希望者全員を66歳以上の継続雇用制度で雇用するものですが、継続雇用制度が報告した企業全体で見れば7.5%にとどまっています。
資料出所:令和2年高年齢者の雇用状況集計結果8ページより引用
3.定年制度廃止の企業は2.7%
定年制を廃止している企業は、報告書を提出した企業の2.7%にとどまっており、またその割合は前回調査から変動もなく定年制廃止が進む傾向はないようです。
厚生労働省令和2年 「高年齢者の雇用状況」集計結果は次のURLでご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15880.html
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2021/01/25