【労務管理】パワハラ防止研修動画の紹介
1. パワハラの定義を再確認
職場における「パワーハラスメント」とは、次の①~③までの要素全てに該当するものと定義されています。
① 優位的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって
③ 労働者の就業環境が害されるもの
この中には、もちろん、客観的にみて、業務上かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントに該当しません。ただしその線引きは難しく状況によって判断していくものと思います。
2.パワハラ防止が義務化されています
労働政策総合推進法と指針の改正が行われたことにより、大企業では2020年6月からハラスメント防止措置が義務になっています。また、現在中小企業は努力義務ですが、2022年4月からは義務化になります。
大企業が行わなければならない、そして中小企業には行う努力義務がある事項には、パワーハラスメント防止をする取り組みの実施が盛り込まれており、その一つに、「ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発」があります。その方法として考えられるのが、定期的な社内研修の実施です。
3. 研修は定期的に行いましょう
ハラスメントを防止する方針は、企業のトップが決定をして発信することが大変重要だと考えていますが、次のステップの研修実施において具体的な素材選びとなると、苦労しているのではないかと思います。
また、上層部にハラスメント行為があって、まず上層部が自覚してほしいと考える人事部門であれば、上層部が認識するような素材を提供したいと思っているかもしれません。そうしたケースで、動画素材が役立つと考えています。
そこで、一部の大企業では、独自の脚本でハラスメント事例をドラマ化して制作会社に発注しているところもあるそうです。
しかし、独自ビデオ制作をすることなく、まず一般的な動画素材で利用できるものを探してみたところ、「明るい職場応援団」が動画を公開していました。この動画は、視聴をした後に確認テストと受講証明書の発行まで用意していますので利用しやすいものです。
それは、厚生労働省が運営を委託している「明るい職場応援団」のオンライン研修講座というページです。動画の構成と視聴に要する時間は次のとおりです。
はじめに
第一章 (15分)パワーハラスメントとは何かを知る
第二章 (3分) 行為者の責任と企業の責任
第三章 (10分)パワーハラスメントと業務指導
第四章 (5分) パワーハラスメントの要望と起きた際の対応について
以上を視聴する所要時間は約40分ですので、パワハラ防止の方針を話し、研修目的を説明し、動画を見て、その後に確認テストで理解を確認する時間を入れて約1時間で研修を組み立てることができます。また、全体の素材を使わなくても、研修の中で、このオンライン研修講座を部分的に取り入れても良いと思います。
なお、これらの素材は、職場に出勤して仕事をすることを前提に製作されているため、例えばテレワークが進む企業が環境の変化に応じたパワハラ事例を想定するなど、変化を盛り込んだ研修が今後の課題になってきます。
明るい職場応援団 パワーハラスメント オンライン研修はこちらです
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/learning/
そして「明るい職場応援団」のサイトは、法改正の解説・他社の取り組み・裁判例も掲載されているため、来年に中小企業へも義務化が始まるパワハラ防止措置を考える材料も収集することができます。「明るい職場応援団」は厚生労働省委託事業で運営されており、トップページはこちらです
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2021/02/25