コンサルタントコラム

【人事管理】コロナで在宅勤務をさせていた社員を出社させたいとき

1. 出勤命令を拒まれた

新型コロナウイルスの新規感染者数の減少にともなって、長い間テレワークを続けていた企業が一部出社を検討していたところ、「社員に出社を命じたら、テレワークのほうが良いので出社したくない」と言われたがどうしたらよいかという相談をうけました。

東京都産業労働局が実施した2021年8月調査結果によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワークは65.0%です。社員数が少ない30~99人の企業をみても59.0%が実施しています。そして、テレワーク実施回数は。週3回以上の実施が51.6%となっています。

また働く人の数でテレワーク実施率を調べたものでは、日本生産性本部が実施した働く人への調査があり、テレワーク実施率は20.4%で2020年7月から2割程度で推移しています。そして週のうち出勤が0日の雇用者は11.6%となっています。(第6回働く人の意識調査)

調査結果から見て取れるように出社と在宅勤務を混合した勤務体制の企業も多いと思いますが、相談をされた企業は、出社を月に1日程度とした、ほぼ完全在宅勤務をさせていました。しかし、11月に入って、新規感染者が減少するにしたがって、出社のメリットを考慮して出社回数を増やすことを検討しているようです。

 

2. 新型コロナ感染防止で導入した在宅勤務の根拠

在宅勤務を縮小して出社を命令する時には、今のところ完全な説はありませんが、これまでのコロナ感染予防のためのテレワークをどのような根拠で実施してきたかによって対応が変わると思います。

テレワーク規程がコロナ前からですでにあった企業の一部では、規程を変更して対象者を拡大する方法で在宅勤務を実施してきたケースがあります。(以下、仮にケースAとします。)

一方でテレワーク規程を変更しないか、またはテレワーク規程を新規作成することなく緊急的な対応として、会社からの業務命令の運用で、在宅勤務を実施してきたケースがあります。(以下、仮にケースBとします。)


◆ケースAの場合

ケースAのテレワーク規程がある場合は、適用する社員の範囲に、次のような要件が入っていると思います。

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テレワーク規程(テレワークのひとつである在宅勤務の一部を抜粋)
(在宅勤務適用者)
第〇条 在宅勤務を希望し次のすべてに該当する社員に適用する。
1. 自宅に通信回線を所有しており会社が貸与するパソコンを保持し、文書情報等の送受信ができる者
2. 在宅勤務が可能だと認められる業務を行い、かつ、業務効率や生産性を向上すると認められる者
3. 集中力があり、時間管理ができる者
4. テレワークに係る申請書およびチェックリストを提出し所属長の許可を得た者
(緊急時の在宅勤務実施)
第〇条 労働環境が〇〇〇〇の時、会社が緊急的に在宅勤務を必要と判断した時は在宅勤務を命じることができる。ただし、その理由がやんだ時は在宅勤務命令を解除し、出社勤務を命じる。
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こうした定めがある場合で、出勤したほうが業務効率や生産性が向上すると会社が認め感染予防の環境が改善したと判断した場合は、在宅勤務を認めず出社させるか又は在宅勤務は週の一定日数のみ。とすることが可能になります。

 

◆ケースBの場合
また件数は多くないと思いますが、ケースB(感染予防のための在宅勤務の定めがない企業等)に該当する企業は、これまでは、雇用契約が成立していると業務命令が可能になる為、感染予防という合理的な理由をもって在宅勤務を命じることも可能になると判断していたと解釈できます。その後、コロナ感染予防としての在宅勤務の必要性がすでに緩和されたと判断すれば、在宅勤務を解除して元の出社勤務に戻すことが考えられます。

私の私見では、ケースBの感染予防のための在宅勤務の定めを作成していなかった企業で出社を拒否する社員は、最初は不自由なことがあったでしょうが、自分の生活パターンや家族の理解を得ながら何とかやりくりして定着させてきて、今や出勤することのデメリットを感じており、それを覆して出勤を命じるだけの根拠を説明してほしいと考えていると思います。

事業主はこの点を考慮しつつも、出社することにメリットがあると考えるならば、出社命令をすることになりますが、根拠となる社内規定がないことから、社員に対しては、ケースAよりも丁寧な説明を行う必要があると思います。

 

 

【コンサルタントプロフィール】

写真_大関ひろ美


大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

DATE : 2021/11/16

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