【人事管理】週休3日正社員② 具体的な取り組み
前回に引き続き、柔軟な働き方のひとつとして、週休3日を取り入れるときの具体的な取り組みを1日8時間・1週の勤務日は5日間・1週40時間を所定労働時間としていたところを、週休3日へ変更し1週の勤務日を4日にすることを考えてみます。
1.他の勤務日の勤務時間を延長して一定期間の時間は変えないとき
週休2日から休日を1日増やして3日にしても、1週や1か月の所定労働時間を変えないで、かつ、1日の勤務時間が法定労働時間の8時間を超えても割増賃金が発生しない設計にするときは、フレックスタイム制や変形労働時間制の導入が考えられます。
企業の部署ごとに、フレックスタイム制と変形労働時間制のどちらにした方がよいかは、メリットとデメリットがありますので、よく検討すると良いと思います。
例えば、企業内のコールセンターや営業の窓口のように、営業時間内のどの時刻にも一定数の社員を確保したい場合は、始業や就業時間を社員にゆだねるフレックスタイム制を採用すると早朝時間帯に誰も出勤しないなどの問題が生じます。その場合は、期間の始まる前に労働時間を計画しておかなければならない変形労働時間制がなじみやすいと考えられます。
それぞれの制度を導入する時の手続きや特徴は次の通りです。
フレックスタイム制 |
変形労働時間制 |
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導入するための手続き等 |
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特徴など |
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期間前に労働日の労働時間を具体的に決定しておく必要がある |
制度の設計には、労使のニーズにあったものを選択し、法令を遵守することももちろんですが、1日の勤務が長時間労働にならないように運用が必要です。
2.休日を増やし労働日数を減らして1週間等の労働時間も減らすとき
週休2日から休日を1日増やして勤務は4日とし、8時間×4日=1週32時間勤務にしても、これまでと同じ成果が得られるのであれば、他の労働日の勤務時間を延長する必要はないと考えることもできます。報道によると、このように労働時間を短くして賃金も維持する企業の例も伝わってきます。
こんな話もあります。「コロナまん延対策として、テレワーク制度・一時休業・時差出勤を運用して数年が経過した。すると、1週40時間勤務でなく、実は1週32時間勤務くらいでも同じ成果が出せると気が付いている。」と人事部門の担当者が語っておられました。そうであれば、人員を減らすのではなく、労働時間を減らす選択肢があるのではないでしょうか。
また、コロナ緊急事態宣言を機会に仕事のやり方を見直して、排除した無駄な手順や手法変更で、効率化が進んだようにも思います。
そして、同じ付加価値を生み出すときに、5日間ではなく4日間で実現できるならば、生産性が向上します。
加えて、業種や職場によっては4日間で働いてみたら5日間で働くよりも多くの付加価値を出せる可能性があることもイメージできます。
3.無理のない運用について
例えば、土曜と日曜日の休日と、新たに社員ごとに決めたウィークデイの1日の休日が増える場合は、その休日中の社員の仕事を引き継いだり、社外からの問い合わせに対応したり、コミュニケーションが円滑になる仕掛けが必要になります。
そして、労働時間管理や給与支払実務が煩雑にならず、正確に運用できるような制度導入が必要にもなります。多様な働き方を導入したら、管理が大変になって、総務人事部門の残業が増えたという話も洩れ聞きます。
最後に、週休3日制の対象者を全員とするか、希望者だけに適用するかも考えるところです。希望者だけを週休3日にした場合、これまでの例で考えたときの地域限定社員のように人事制度の中で昇格や配置転換で差をつけるのか、もしくは、差をつける必要性がないのか。差をつけないとしたら、社員全体の納得が得られるのかなども大事な検討項目だと思います。
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2022/04/18