【人事管理】週休3日正社員①
柔軟な働き方を検討する企業から相談を受ける機会があります。内容は、テレワーク勤務がひと段落し、少しずつですが週休3日のご相談です。この背景には、長引く新型コロナ感染症対策から、時差出勤やテレワーク及び時短勤務を実施したところ、今後はもっと違った働き方ができるのではないかと、使用者も労働者も考えている傾向があるのではないかと思います。
特に先週は、柔軟な働き方を認める事業の取組が新聞等で報道されたこともあってか、複数の企業から相談を受けました。
週休3日などの柔軟な働き方を取り入れる目的は、企業ごとに異なりますが、次のような理由があると思います。
〇魅力的な勤務体制で優秀な人材を確保したい
〇時間によらず成果を出してくれる人材を求めたい
(会社に長い時間居る人が優秀と評価する時代と決別したい)
〇誰にでも訪れる育児・介護・自身の病気治療で社内キャリア中断させない
〇空いた時間を使って自ら成長する取り組みを期待する
〇1社にしがみつく感覚からくる弊害を取り除きたい
そこで、週休3日勤務を考えてみると、具体的な取り組みを検討するときの大きな着目点は、2つあると思います。
① 1週間や1か月の所定労働時間の合計時間数について
A:出勤日数が減る分、週などの一定期間の労働時間も短くする
B:出勤日数は減らすが週などの一定期間の労働時間は変えない
② 所定労働時間を短くしたとき等に支給する賃金額について
A:時間に応じて現状より減額する
B:時間を短くしても現状維持の額を支給する
C:所定労働時間を変えない工夫をして現状を維持する
図1)週休3日で休日が増えたときの賃金額組み合わせ例
例えば、これまでの短時間勤務の例で考えると、育児介護休業休業法にそって短時間勤務制度を選択した社員の例があります。これは、短時間勤務に応じた賃金を支給する設計をしていた企業が多く、週休3日の制度を育児等の短時間勤務と同じような扱いとするならば、時間に応じて賃金を減額する設計になります。
そうすると、1日8時間の5日間勤務=1週40時間のところを、1日8時間の4日勤務=週32時間の時短勤務を選択すると 40分の32の賃金とします。
しかしながら、育児や介護に限らず、所定労働日数や所定労働時間の短縮を希望する社員に柔軟な働き方を導入する時は、(労働条件の不利益変更にならないかをいったん考えずにおいても)賃金を変えずに、働く日数・時間・場所の選択肢を増やすほうが自然な取り組みです。
では、①のB 出勤日数は減らすが週の労働時間は変えないで、 ②のC 月額賃金額を維持する場合を考えてみます。
単純に週の労働時間を考えると8時間×5日=40時間であったならば、週休3日制で週勤務日数を4日にする場合は、1日の労働時間を40時間÷4日=10時間にすれば良いです。
しかし「使用者は、原則として、1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならない。」という労基法の規制があります。よって、先ほどの例では、変形労働時間制等を取り入れないときは、毎日2時間の時間外割増手当の支払いをすることになります。なお、先週の筆者への相談の様子からすると、1日10時間勤務に変更した時の2時間の「割増手当支給」が見落とされてしまう傾向があるように思います。
そこで、この場合でも、1か月単位などのフレックスタイム制で一定期間中の労働時間を労働者が判断して週4日間で働くことにしたり、変形労働時間制を取り入れて期間内の労働時間を働くことにしたりすることで割増賃金が発生することなく、もちろん減額することもなく週休3日制を導入することができます。(次回に続きます)
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2022/04/17