【人事管理】時間単位有休は5日付与義務のカウント対象外
1.時間単位年休と年休5日取得義務について
時間単位年休は、事業主に義務になっている「労働者に年間5日の有給休暇取得を取得させること」を判断するための取得日数5日に含めて計算することはできませんから注意が必要です。
年次有給休暇(以下は年休といいます。)は、1日単位で取得することが原則ですが、労働者が時間単位で取得したいと請求した場合には、年間5日間を限度として、時間単位で労使協定をすれば時間単位の年休を付与することが可能です。(ただし、労使協定の締結が必要ですので制度運用を始める前に締結してください。)
過去を振り返ると、年休の時間単位付与がさきに可能になり、その後、平成29年4月から年間5日の有給休暇を労働者に取得させることが事業主の義務になりました。(対象は年休が10日以上付与される労働者です。)
よって、時間単位年休も付与義務の5日に入れて計算して良いと誤って認識される傾向があるようです。
さて、時間単位年休を取り入れている会社で、時間単位年休の使いやすさを聞いてみました。すると、子育て等と仕事を両立している社員は1日単位ではなく時間単位のほうが取得しやすいそうです。
聞いてみると、「子供が病気になったら1日単位で休みたいので、まずは時間単位で取得したほうがいいと思っている。1日単位で休むのはイザというときに取っておきたい。」と考えているそうです。
ここでは、5日付与義務にカウントできるかどうかについて、年休やその他の休暇をまとめてみます。
種類
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内容 | 制度導入時労使協定の締結 | 5日取得義務のカウント |
1日単位の年休 |
労働者が請求する時季に与えることとされています。請求された日に年休を与えると事業の正常な運営を妨げる(要件あり)場合には時季を変更することができます。 |
_ |
〇 |
1日単位の年休の計画年休(計画的付与) |
計画的に取得日を定めて年次有給を与えることが可能です。ただし、労働者が自ら請求・取得できる年次有給休暇を最低5日残す必要があります。 |
必要 |
〇 |
半日単位年休 |
年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労働者が半日単位での取得を希望して時季を指定し、使用者が同意した場合であれば、1日単位 取得の阻害とならない範囲で、半日単位で年次有給休暇を与えることが可能 です。 |
_ |
〇 |
時間単位年休 |
年次有給休暇は1日単位で取得することが原則ですが、労働者が時間単位での取得を請求した場合には、年に5日を限度として、時間単位で年次有給休 暇を与えることが可能です。 |
必要 |
× |
特別休暇 |
年次有給休暇に加え、休暇の目的や取得形態を任意で設定できる会社独自の特別な休暇制度を設けることも可能です。 |
_ |
× |
2.年休の5日取得させる義務を果たさないと
年5日の年休を取得させなかった場合で、労働基準法第120条の規定があてはめられると、30万円以下の罰金になります。これは、対象となる労働者1人について1罰になると予定されており、対象人数が増えると罰金が多額になります。
ただし、5日取得の法改正がなされた当時の厚生労働省のパンフレットによると、「1人につき1罰として取り扱われますが、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。」となっていますから、まずは指導の対象にならないように年休取得を実現させなければなりません。
新型コロナと経済活動の環境は以前よりは落ち着いてきているため、仕事が忙しくなり、社員の年休取得が減ってくると年間5日取得義務に抵触する結果になるかもしれず、また、労働基準監督署等の是正方針転換もあるでしょうから、年休取得にきちんと取り組む必要性を感じています。
詳しくはパンフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」 作成:厚生労働省ほか で確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2022/05/23