コンサルタントコラム

【人事管理】デジタルマネーの給与支払い 令和5年4月から

1.趣旨と概要
賃金は、毎月定期的に、通貨で全額を直接支払う必要があります(労基法第24条)。
現在は、労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結べば給料の銀行振込も可能です。ただし、協定を締結しても個々の労働者との合意は必要となりますので注意してください。

キャッシュレス決済の普及などを背景に、令和5年4月から、資金移動業者の口座への賃金移動を給与支払いに利用することが可能になり、いわゆる賃金のデジタル払いができることになります。
資金移動業者は、令和4年9月末現在登録(財務局長登録)85業者のうち、賃金の支払いを保護するために保全対応等を備えて申請し、厚生労働省に指定を受けた事業者が賃金のデジタル払いに対応できるようになります。この指定資金移動業者の申請は、令和5年4月から開始され、指定資金移動業者は順次厚生労働省のホームページ等で公表されます。

労働者は、賃金のデジタル払いを希望する時は、指定資金移動業者の中から事業者を選択して書面に記載し、事業主と給与支いの合意をすることになります。賃金受け取り方法の選択肢の一つにデジタル払いが加わるイメージですので、もちろんこれまで通り銀行等で受け取ることも可能です。
なお、給与受け取りに使う指定資金移動業者の受け取り上限額は、100万円を超えることができない為、労働者は、銀行口座か証券総合口座を選択肢としてあわせて提示しなければいけません。

 

2.事業主が行うこと
事業主が賃金のデジタル払いを支払いの選択肢に入れるメリットの一つに、銀行への振込手数料と比較して手数料が安くなることがあると言われています。その一方で、新しい支払い方法追加に対応する運用コストも考慮する必要がありますが、そのほかにも踏まなければならない手続き等があり概要は以下の通りです。

(1) 労働者の同意と書面受理
労働者の同意書は厚生労働省が書式見本を提供しています。事業主は、労働者から、取扱資金移動者口座の指定や、開始希望日等必要事項を記載した書面を受け取る必要がありますし、労働者が、留意事項等の説明受け、制度を理解した上で、書面を提出するように説明する義務があります。

(2) 労使協定の締結
事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合と、ない場合は労働者の過半数を代表する人と賃金デジタル払いの対象にする労働者の範囲や取扱指定資金移動事業者の範囲など必要事項を記載した労使協を締結します。

(3) 給与明細書の交付
取扱指定資金移動事業者を通じて支払った基本給や諸手当及び控除項目と金額を記載したいわゆる給与明細書を交付することが必要です。

(4) 賃金支払い日に引き出せる
所定の旧支払日の朝10時頃までに引出し等ができる状態にしておくことが必要です。

 

3.厚労省が公開しているQ&Aより
賃金のデジタル払いについて疑問を想定したQ&Aが出ていますので、いくつか概要を紹介します。

 

設問1:賃金のデジタル払いは必ず実施しなければならないのでしょうか。引き続き、銀行口座等で受け取ることができなくなるのでしょうか。

回答:賃金のデジタル払いは、賃金の支払・受取の選択肢の1つです。
労働者が希望しない場合は賃金のデジタル払いを選択する必要はなく、これまでどおり銀行口座等で賃金を受け取ることができます。賃金の一部を資金移動業者口座で受け取り、残りを銀行口座等で受け取ることも可能です。

 

設問2:賃金のデジタル払いを選択するために留意すべき事項をわかりやすく教えてください。

回答:労働者は、資金移動業者口座は「預金」をするためではなく、支払や送金に用いるためであることを理解の上、支払等に使う見込みの額を受け取るようにしてください。その他の留意事項は、同意書の裏面に記載されています。
使用者は、労働者に対して賃金のデジタル払いを賃金受取方法として提示する際は、銀行口座か証券総合口座を選択肢としてあわせて提示しなければいけません。また、労働者に対して、同意書の裏面に記載された留意事項を説明してください。
*上記の同意書をクリックすると厚労省の書式見本にジャンプします。

 

現時点の制度概要などは厚生労働省のホームページでも確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

 

【コンサルタントプロフィール】

写真_大関ひろ美


大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

DATE : 2023/01/20

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