コンサルタントコラム

【人事管理】欠勤控除の完全月給制と月給制の違い

1.完全月給制とは
最近あまり聞かれなくなった言葉に、完全月給制があります。しばしば使われている用語ですが、労働基準法などに定められた用語ではありませんので、その会社ごとに就業規則で定義を定めておかなければ、欠勤や遅刻・早退の取扱いがあいまいになります。

完全月給制の一般的な扱いは、賃金額を1か月に対して定額で支給することを約束している賃金体系です。よって、あくまで一般的な解釈になりますが、完全月給制の社員が欠勤や遅刻・早退をしても、賃金を控除することはありません。

一方で、事業主が完全月給制の社員に、法定労働時間である1日8時間又は1週40時間を超えて労働をさせたときは、割増賃金の支払い義務があります。
さらに、深夜時間帯や法定休日に労働させた場合は、深夜勤務や法定休日の賃金割増の支払い義務がありますので、注意が必要です。

完全月給制の社員は欠勤しても賃金控除がありませんが、年次有給休暇を請求することができますし、事業主は年間10日以上の年次有給休暇を付与している完全月給制社員には、年間5日間の年次有給休暇を取得させる義務があります。
完全月給制社員は本人の都合で休んでも賃金を控除しないので、年次有給休暇付与の扱いにしないことが多かったと思いますが、事業主は年間5日間の付与義務を実行する必要がありますので、有給消化の管理を適正に行うことになります。

 

2.月給制とは

日常的に使っている言葉に、月給制があります。こちらも労働基準法などに定められた用語ではありませんので、その会社ごとに定義を決めておかなければ、欠勤や遅刻・早退の取扱いがあいまいになります。

月給制は、一般的に月によって定められた賃金を払う制度ですが、そもそも賃金は労働の提供があった時にその対価として支払うものですので、本人の都合で欠勤や遅刻・早退等で労働が提供されなかった分は、賃金の控除しても差し支えありません。

そこで、労働が提供されなかった時の賃金控除の計算方法ですが、これについて具体的に労働基準法が定めたものはありませんので、合理的な計算方法を決めて、就業規則に定めておく必要があります。

尚、欠勤等が頻繁にあるケースは別として、控除方法は、実際に給与計算を担当していると計算式をどうするか迷う項目ですし、その都度決めていては煩雑になり、そもそも社員同士で不公平な計算が生じてしまう恐れがあります。

例えば、月給制の社員が本人の所定労働時間の全部=まる1日の欠勤をしたときの控除計算法はいくつか考えられます。

・A:欠勤1日につき月給額を当該月の出勤するべき所定労働日数で割った額
・B:欠勤1日につき月給額を当該月の歴日数(28日または29日,30日,31日)で割った額
・C:労基則の割増賃金に関する通常の賃金計算について定めている第19条4号に準じて、月給額を当該月の所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異る場合には、一年間における1か月平均所定労働時間数)で割り、1日の所定労働時間を掛けた額

尚、Cの( )書きのように1か月平均所定労働時間で割り欠勤日数を掛ける算式の場合は、所定労働日数が多い月に全部欠勤した時などは、欠勤控除額が月給額を超えてしまうときがありますので、但し書きなどで、欠勤控除は月給額を上限にすることを定めておくことが合理的と考えます。
また、所定労働日数が少ない月に全部欠勤した時にCの( )書きの計算方法を使うと、欠勤控除は月額より少なくなりますが、全部欠勤しているので月給全額を控除すると規定しておくことも合理的と考えます。

 

3.実務上で問題となったケース

社員数が少なく採用に不慣れで、また、就業規則を作成していない会社で、月給社員を募集した時、欠勤等の賃金控除をしたら、月給社員から不服を言われることがあります。
それは、事業主は月給制と言えば、欠勤で労働がない部分は賃金控除をすることが当然と考えている一方で、採用された社員は月給制と言えば完全月給制に違いないから欠勤控除はないと考えているように思います。そこには大きな違いがあります。働き出してから、もめごとにならないように、就業規則に定めて入社時に明示をしておくことが大切です。

 

 

【コンサルタントプロフィール】

写真_大関ひろ美


大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

DATE : 2023/05/22

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