【人事管理】就業規則の周知とは
1.就業規則を労働者に周知させる
就業規則を作成や変更をして管轄の労働基準監督署へ届出をするときは、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴いて、その意見を記した書面を添付して届出をしなければなりません(労働基準法第90条)。
そして、届出が終わった就業規則は、会社で保管しておくだけでは足らず、労働者へ周知させなくてはなりません(労基法106条)。
労働基準法第106条では、いずれかの方法で周知をすることになっています。
常時各作業場飲みやすい場所へ掲示し又は備え付けておく
書面で各自に交付する
磁気テープ、磁気ディスク等に記載し、かつ、各作業場に労働者がその記録内容を常時確認できる機器を設置する
よって、各自に配布するか、休憩室などに設置しておくか、誰でも見られるPCの共有フォルダー保管し閲覧させる方法などが考えられます。
2.周知をさせていない就業規則の効力は
周知していなかった就業規則が有効か否かを明文化したものはありません。過去の裁判例においては、届け出はしているが、届け出をする際に意見聴取をせず周知もしていないという事案で就業規則の効力を認めなかったもがあります。
一方で、届け出がなされた就業規則で周知がなされていなくても有効としたものもあり、判断は定まっていないようです。
3.就業規則を新入社員にいつ周知するか
「労働者に周知させていた」という状況の中には、あらたに労働契約を締結する新入社員についても、労働契約の締結と同時に周知をさせていた場合も含まれるものとされています(労働契約法のあらまし14ぺージ)。
では、労働契約の締結が内定日なのか入社日なのかという問題があります。
これについては、採用内定の状況において労働契約はすでに成立しているという解釈がありますので、採用内定の段階で就業規則を周知させておかなければならないと考えられます。
4.就業規則の持ち出しを禁止できるか
就業規則を重量な社内の文章だと位置付けて、コピーをすることや社外に持ち出すことを禁止している例があると聞きました。
社外等へ持ち出しすることを禁止したり、持ち出すならば事前に許可を得ることと決めたりしてはならない。という決まりはありませんので、社外へ持ち出すことを許可制にすること自体は問題ありません。
ただし、内容については労働基準監督署へ既に届け出ているものであることを考え併せると、持ち出しを禁止して厳密に扱う必要もないように思います。もし、社外に持ち出したいという社員がいるとしたならば、内容について疑問を感じているように思われます。
内容について疑問があれば、いつでも相談を受けて説明できるようにしておくことが肝要と考えています。
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2023/07/18