【人事管理】長時間労働事業所の労基署立ち入り調査結果
厚生労働省は令和4年度に実施した長時間労働が疑われる事業所への労働基準監督署の指導結果を発表しました。
労働者や情報提供元から時間外・休日労働時間数が1か月あたり80時間を超えていると考えられる事業所や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業所が対象になったようです。
1.法違反の状況
対象となった33,218事業場に対して監督指導が行われ、81.2%の26,968事業場に労働基準法関係法令の違反がありました。
そのうち一番多かったものが42.6%の14,147事業場で違法な時間外労働があり、賃金不払い残業は3,006事業場、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものは8,852事業場でした。これらに対して、是正・改善に向けた指導が行われました。
表1 監督指導実施事業数
( )内は、監督指導実施事業場数に対する割合
資料出所:厚生労働省 「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」より抜粋
2.時間外・休日労働時間が長いものの実績
監督指導を実施した結果、違法な時間外労働があった14,147事業場において、時間外・休日 労働が最長の者を確認したところ、5,247事業場で1か月80時間を、うち3,320事業場で1か月100 時間を、うち752事業場で1か月150時間を、うち168事業場で1か月200時間を超えていました。
表2 監督指導実施事業場における時間外・休日労働時間が最長の者の実績
資料出所:厚生労働省 「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」より抜粋
3.時間外労働の上限規制
時間外労働の上限は、原則として月 45時間、年360時間(限度時間)です。
臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、 単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)*とされています。(働き方を推進するための関係法律の整備に関する法律により改正された労働基準法によるもの)
*限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6か月が限度。
*一部の業種と業務(建設業・事業者運転の業務・医業に従事する医師・鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業)には、令和6年3月31日まで適用猶予あり。
厚生労働省は、今後も長時間労働の是正に向けた取り組みを引き続き行い、また、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中にも重点的な監督指導を行うとしています。
指導結果・指導事例・関係法令の概要等を記載した厚生労働省の報道発表資料はこちらです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000969975.pdf
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美
(株式会社ブレインパートナー 顧問)
三重県四日市市出身。
ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)
DATE : 2023/09/25