コンサルタントコラム

【人事管理】配偶者手当の在り方見直し

多くの企業で家族手当や配偶者手当を支給しているというデータがあります。調査年次が少し古いのですが、人事院の令和2年職種別民間給与実態調査によると、家族手当制度がある企業は、75.9%で、そのうちの79.1%が配偶者に家族手当(以下、配偶者手当と言います。)を支給しています。また、配偶者手当を支給するとき約8割の企業が、配偶者の収入による制限を設定しています。例えば配偶者の年収が103万円、130万円、150万円以下のとき支給するなどの制限です。

 

厚生労働省の資料(*1)に配偶者手当の成り立ちに関して記載されたものがあります。1939年10月の賃金臨時措置例によって、賃金引き上げが凍結された一方で物価がじりじりと上昇したため、扶養家族を有する労働者を対象に「家族手当」を支給することを許可し、その後、1950年代にはじまる高度成長期には、(一部省略)稼ぎ手としての夫と専業主婦としての妻、その間の未熟な子供という核家族を後押しする仕組みとして、いわゆる「日本的雇用システム」が構築され、家族手当も正規従業員に対する処遇として定着した。とあります。
(*1)厚生労働省 配偶者手当を取り巻く現状 阿部委員ご提出資料部分より抜粋

 

ご承知の通り、社会的な環境が変化しているため、以上のような成り立ちがある家族手当・配偶者手当を見直す必要性が感じられると思います。

厚生労働省は令和5年10月20日に、「配偶者手当を見直して若い人材や能力開発に取り組みませんか?」というリーフレットを発表しました。これは政府が公言している「年収の壁・支援強化パッケージ」の一環で、企業に配偶者手当支給見直しを促すものです。

 

このリーフレットでは、パートタイマー等で働く人が、配偶者の会社の配偶者手当を受け取って家計全体の収入を確保するために、パート収入を配偶者手当の支給基準を超えないように働き控えをすることを解消しようと呼びかけています。

現在社会全体で、働き手の不足解消、多様な人材の活用、社会保険や税の負担を担う人材を増やすことが注目されています。
働くことを望む人材が労働に参加し能力を発揮してもらうために、配偶者の会社から支給される配偶者手当の支給制限額を気にすることなく働けるようにするには、社会全体で配偶者手当の在り方を見直していくことが期待されていると思います。

 

一方で、配偶者手当を廃止してしまうと、これまで配偶者手当を受け取っていた従業員の収入が減額になりますので、不利益変更になります。
それを回避するための施策は多数考えられますが、厚労省の資料(*2)から抜粋すると次のような例が考えられます。

・配偶者手当の廃止(縮小)+ 基本給の増額
・配偶者手当の廃止(縮小)+ 子供手当の増額
・配偶者手当の廃止(縮小)+ 資格手当の創設
・配偶者手当の収入制限の撤廃  など
(*2)厚生労働省のパンフレット 配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?いわゆる「年収の壁」対策 より抜粋

 

さて、以上のような企業の取り組みに加えて、政府は当面の対策として「年収の壁・支援強化パッケージ」を進めていくようです。この取り組みの中には、短時間労働者の社会保険加入者の検討や賃上げ、配偶者の扶養の事務手続きに影響があるため注意が必要です。

厚生労働省の「企業の配偶者手当の在り方の検討」の特集ページは以下のURLで確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/haigusha.html

 

 

【コンサルタントプロフィール】

写真_大関ひろ美


大関ひろ美
株式会社ブレインパートナー 顧問
三重県四日市市出身。

ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。
現在は、ワンズライフコンパス株式会社と併設するワンズ・オフィス社労士事務所の代表に就任。2006年パートアルバイト派遣の使い方ここが間違いです(かんき出版) 2013年~雇用形態別人事労務の手続と書式・文例、雇用形態別人事管理アドバイス(共著、新日本法規出版)

 

DATE : 2023/11/24

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