【人事管理】割増賃金の基礎額に在宅勤務手当をいれるかどうか
在宅勤務手当を時間外勤務等の割増手当の基礎となる賃金から除外することができる場合については、厚生労働省基準局長が発出した通知があります。
なお、要件を満たす場合においては割増手当の基礎となる賃金から除外できますが、既に割増手当の算定基礎額に入れているものを除外する場合は、支給する割増手当額が減少するので、労働条件の不利益変更にあたり、法令等で定められている適切な手続きと話し合いが必要です。
1. 割増賃金の基礎となる賃金
割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金及び一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金とされているため、一般的には在宅勤務手当は割増賃金の基礎となる賃金に算入します。
一方で、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されているときで、通知(基発0405第6号 令和6.4.5)の内容を満たすときは、割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくてもよいことになります。
2. 実費弁済の考え方
実費弁済の手当であると認められるには、就業規則等で実費弁償分の計算方法を明示して、かつ、その計算方法は在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法である必要があります。
例えば、必要な費用を上回った支給額を社員に毎月定額を渡し切りで支給している場合は、実費弁償に該当しませんので、割増賃金の基礎となる賃金に算入します。
3. 実費弁済の計算方法
在宅勤務手当のうち、実費弁償に当たるものとしては、事務用品等の購入用、通信費(電話料金、インターネット接続に係る通信料)、電気料金、レンタルオフィスの利用料金などが考えられます。
これらが事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理されるために必要な「在宅勤務の実態(勤務時間等)を踏まえた合理的・客観的な計算方法」としては、以下の方法などが考えられるとして、通知では3通りの例があげられていますので、ここでは概略を紹介します。
(1) 国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」 (以下「国税庁FAQ」といいます)で示されている計算方法によって支給する方法
この国税庁FAQでは、以下のような料金を個別に計算する例が掲載されていますので、詳細を確認してください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
・電話料金等の通信料
・インターネットの通信基本使用料や通信料
・スマートフォン等の通話時間でかかる料金
・電気料金
(2) (1)の一部を簡略化した計算方法
在宅勤務手当支給の対象者ごとに、過去の複数月の通信費や電気料金をもとに実費弁償となる金額を計算し、一定期間継続して支給する方法
(3) 実費の一部にあたるものを支給する額の単価をあらかじめ定める方法
在宅勤務手当を実費の額をうわまわらないよう1日当たりの単価をあらかじめ決めて在宅勤務日数を乗じた額を支給する方法が考えられ、
ア. 一定数の労働者について国税庁FAQの例によって1か月当たりの業務のために使用した「通信費の基本使用料や通信料等」、「電気料金の基本料金や電気使用料」をそれぞれ計算し、
イ. その額から1日当たりの単価を計算して、
ウ. 一番低い額のものを在宅勤務手当の1日額にする
方法が考えられるとしています。
ここでは、概略を紹介しましたので、在宅勤務手当を割増手当の基礎となる賃金から除外する場合は、基発0405第6号 令和6.4.5「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」をご確認うえ検討をお願いします。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240409K0010.pdf
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美 (株式会社ブレインパートナー 顧問) 三重県四日市市出身。 ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。 |
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DATE : 2024/07/29