【人事管理】フリーランス新法に対応した就業規則
1. フリーランス新法について
令和5年4月28日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、フリーランス保護法といいます。)は成立し、令和5年12日に交付されました。そして、令和6年11月1日にこのフリーランス新法が施行されています。
フリーランス新法では、受託側のうち従業員のいない個人事業主や法人の一人社長(いわゆるフリーランス)を特定受託事業者としており、特定受託事業者との取り引きを対象にしています。
フリーランス等である特定受託事業者に業務を委託するときは、依頼側の業務委託事業者に対して次のような義務を課しています。
取引条件の明示義務(明示する項目が決められている)
さらに業務委託事業者のうち、従業員又は役員が2人以上いる事業者を特定業務委託事業者といい、特定業務委託事業者には、
報酬支払期日(特定業務委託事業者は、60日以内・または再委託の場合は30日以内のできるだけ早い期日に報酬を支払う)
禁止行為(特定受託事業者との委託期間が1カ月以上である場合には受領拒否を禁止するほか遵守・禁止する行為を定めている)
就業環境の整備に関するする規制(募集時の正確な情報掲載、育児介護等への配慮、ハラスメントの防止、中途解約の事前予告)など
2. 特定業務委託者は社内の就業規則を整える
特定業務委託者である企業が、フリーランス等の特定受託事業者に委託をする場合は、自社の社員が、特定受託事業者の就業環境に関して、
パワーハラスメントを禁止する
セクシャルハラスメントを禁止する
妊娠、出産・介護と業務の両立等に関するハラスメントを禁止する
定めを就業規則に定めて、これらを行わない規定を置くことが必要です。
就業規則の定めの事例として、パワーハラスメント・セクシャルハラスメント・妊娠、出産等に関するハラスメントに関する条項が既にある場合は、それぞれの行為の対象者に、「当社が業務を委託する個人事業主等に対する行為を含むものとする。」と付け加える方法があります。
もっと、具体的に規定をおく場合は、次のような規定例が考えられます。
<業務委託におけるハラスメントを禁止する就業規則記載例>
第〇条 業務委託におけるハラスメント禁止
1. 役員および従業員は、特定受託業務従事者(定義は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第2条2項による)に対して、業務委託における次に掲げるハラスメント行為を行ってはならない。
(1) 業務委託におけるパワーハラスメントとは、取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ同等な範囲をこえたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害することをいう。
(2) 業務委託におけるセクシャルハラスメントとは、性的な言動、または、その者の業務委託の条件について不利益な扱いをしたり、就業環境を害すること。なお、相手の性的指向や性自認の状況に関わらないほか、異性に対する言動だけでなく同性に対する言動も該当する。
(3) 業務委託における妊娠・出産・育児休業休業等に関するハラスメントとは、妊娠・出産および育児休業等に関する制度または措置の利用に関する言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること。
(4) 業務委託におけるハラスメントとは、言動およびこれに類する言動をすること。
*以上は、既存の就業規則と社内の状況に応じた内容を規定するようにお願いします。
厚生労働省の フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へのホームページはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html
【コンサルタントプロフィール】
大関ひろ美 (株式会社ブレインパートナー 顧問) 三重県四日市市出身。 ワンズライフコンパス(株)代表取締役、ワンズ・オフィス社労士事務所 代表。1981年~ 三菱油化(現、三菱ケミカル)株式会社の人事部門に約9年間勤務。1992年社会保険労務士資格を取得(その後特定社会保険労務士を付記)。 1996年~ 外資系生命保険会社ほか勤務、北九州市嘱託職員として介護保険導入に携わる。2001年~ 社会保険労務士事務所を開所独立。 |
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DATE : 2024/12/02