コンサルタントコラム

【人事管理】望ましい退職管理の在り方

退職管理の目的は、企業から人をスムーズに退出させることですが、時代背景との関連を意識しておくことが必要です。かつてのように、退職管理を「定年退職するときのスポット的な管理活動」としてとらえるのではなく、「企業にとっても、個人にとっても望ましい退職管理の在り方」を考えながら取り組んでいくことが必要です。

退職には、(1)定年退職  (2)契約満了  (3)自主退職  (4)解雇 の4つのパターンがあり、人事として留意しなければならないポイントは異なってきます。

 


(1) 定年退職

高齢者雇用安定法の定めにより、定年を定める場合は60歳を下回ることはできません。また、定年を65歳未満に定めている企業は、65歳までの安定した雇用確保への取り組みが義務付けられています。
具体的な取り組み内容としては
① 定年の引き上げ
② 継続雇用制度の導入
③ 定年制の廃止
のいずれかを行う必要があります。

国が目指している生涯現役社会の実現や、年金支給年齢の引き下げ等の社会的な変化にも留意する必要があり、企業としては、計画的かつ体系的に定年退職者の就労支援制度を構築していく必要があるといえます。

<定年退職者の就労支援制度の例>
a. 定年退職者の継続就労制度
・勤務延長制度:定年年齢に達した従業員を退職させることなく引き続き雇用する。
・再雇用制度 :定年年齢に達した従業員をいったん退職させたのちに改めて雇用する。

b. セカンドキャリア支援制度
・能力開発支援
・再就職のあっせんや相談、情報提供
・独立開業支援
・キャリア設計セミナー・キャリアデザインセミナー・定年準備講座の実施

 

 

(2) 契約満了
期間の定めのある従業員が、一定の雇用契約期間が終了すること。
雇止め制限は原則として上限3年です。ただし、一定の条件を満たせば上限を5年とすることが可能です。

 

 

(3) 自主退職
自主退職には、以下の3つのケースがあります。
① 自己都合退職:自己の都合によって退職すること。
② 希望退職  :希望退職募集に応じて退職すること。
③ 早期退職  :早期退職制度に沿って自発的に退職すること。従業員の意思と生涯設計に基づいた選択の1つとして設定される制度。

 

 

(4) 解雇
解雇は以下の3ケースがあり、企業側の責任が異なります。
① 整理解雇:業績の悪化などによる雇用調整の企業の施策としての解雇。
ただし「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と是認することができない場合には、権利の濫用となり無効となる」という解雇権濫用の法理がありますので、整理解雇の要件を満たしているかどうかを十二分に検討する必要があります。
② 普通解雇:勤怠状況が著しく悪いなど、就業を継続することが困難になった場合の解雇。
ただし「解雇の事由」はあらかじめ就業規則に列挙しておかなければなりません。
③ 懲戒解雇:重罪を犯すなど、著しく企業の名誉を失墜させることなどに対する懲戒処分として行われる解雇。

①と②の場合には30日前までに解雇予告をするか、予告を行わず解雇する場合には最低30日分の平均賃金を、解雇予告手当として支払う必要があります。

退職管理を円満活適切に行うためにも法律面での知識を学んでおきたいものです。
法律上は企業の「解雇の事由の原則」がありますが、解雇をするためには「正当な理由」が必要です。「正当な理由」のない解雇は、企業の解雇権の乱用に当たるという法理が確立されています。法律の条文のみならず判例等にも目を通し、学びを深めておくか、専門家に相談できる環境を整えておきましょう。

また、退職する従業員にとって納得のできる「退職」であるためには、企業と従業員の双方で情報が共有され、それが開示されることが必要です。

さらに、退職する社員に対し、新たな能力育成や新しい仕事探しを積極的に支援するなど、退職におけるトラブルを発生させない施策も用意しておきましょう。

【コンサルタントプロフィール】

阿部 プロフ用PHOTO2 阿部 素子
(株式会社ブレインパートナー 執行役員 マネジメント・コンサルタント)
大分県由布市出身。中小企業の人事や組織強化に関わるマネジメントコンサルタント歴20年。 日本経済を支えている中堅・中小企業に働く人々がイキイキとした日々を送れる事をサポートしたい。よりフェアーな評価と適切なキャリア開発が組織のパフォーマンス向上を引き出すという信念を抱き、1996年より人事評価制度の構築、目標管理の制度設計、運用支援、営業力強化支援を手掛け多くの実績を重ねる。 中堅・中小企業の組織風土に適した人事評価制度を構築し、スムーズな運用をサポート。

 

DATE : 2016/08/01

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