【労働時間管理】労働時間について② 事例で考える
労働時間を事例で考える
前回コラムでは労働時間について、労働時間とは使用者の指揮命令下にある時間だとされていることを解説しましたので、今回は、労働時間の具体的な事例を考えてみます。
1. 始業時間前の職場の掃除
例えば、職場の清掃や製造現場の機器の立ち上げ準備などの時間は労働時間とするのでしょうか。
その行為が職務上必要な行為であり、使用者が行うように指揮命令している行為であれば労働時間として扱う必要があります。
就業規則に「始業時刻前に職場の整頓を行い始業時刻に仕事を始められるようにすること」と規定している例はよくあります。
この場合、直ちに早出時間として扱われるわけではく、実態に沿って判断をせざるを得ません。
始業前の掃除について作業を指示していたり、職場の整頓がそもそも長い時間を要したり、業務の一環と認められる場合は、労働時間として扱いその結果賃金の支払いが必要です。それに加えて早出時間が、法定労働時間を超えて命令する労働であれば、時間外割増支払いも必要です。
2. シフト制勤務の交替引き継ぎ
昼間の勤務の人が夕方勤務の人に仕事の引き継ぎを行うことが上司によって命令されているような場合では、引き継ぎ時間も労働時間になります。
3. 毎朝仕事前の10分朝礼
仕事前の朝礼を上司によって指示されて行っているのではあれば、使用者の指揮命令下があるといえ、労働時間になります。
しかし、社員の間の自主的な勉強会であれば、労働時間になりません。ただし、社員の自発的な勉強の目的で始まった勉強会でも、そこに参加していることが人事評価のプラスになっている場合など、自主的な活動かどうかの明確な線引きが難しいケースがあります。実態によって判断することが求められます。
4. 24時間稼働のシステムを監視するエンジニア
待機時間になるかどうかも実態に合わせて判断が必要です。
Aさんは、システムエンジニアです。昼夜を通して稼働しているシステムの監視業務をしています。夜間に12時間の勤務をしており、システムは時々エラーがおこることがあり、警報が鳴るなどした時だけ決められた対応をする監視業務です。
警報が鳴らなければ、仮眠が4時間与えられているけれども、システム設置室内の仮眠スペースで待機しながら仮眠しているような場合は、仮眠の時間を労働時間とするのでしょうか。
仮眠時間については、最高裁判所は、「実際の作業に従事していないというだけでは使用者の指揮命令下にないといえず、その時間に労働者が労働から離れることを保障されているときに初めて、使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価できる。」とした例があります。
よって事例のAさんのケースでは、仮眠の間でも警報が鳴った時に作業をさせるのであれば、労働から離れているとは評価できず、仮眠の4時間も労働時間と判断することが相当だと考えられます。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2016/11/07