【労働時間管理】労働時間について④ 三六協定の問題点
三六協定の問題点
前回のコラムに引き続き時間外労働について解説したいと思います。
1. 三六協定(さぶろくきょうてい)の問題点
三六協定で労働時間を延長できる限度等は、厚生労働大臣が定めています。ただし、特別条項を付けて協定すると限定的ではありますが、法定時間外労働を長く協定することができます。そしてこの特別条項に定める法定時間外労働の上限については、現在のところ明確に公表されている時間数がありません。
また、三六協定をして届け出をしていても、その協定で定めた上限時間を超えて法定時間外労働が行われている事業所もあることや、「建設・自動車の運転・新技術等の研究開発ほかの一定の事業又は業務」には、上限時間がないため、三六協定のルールが妥当かどうかという指摘がされています。
では、労働時間が一定の時間を超えると企業にどのようなリスクがあるでしょうか。生産性の低下はもちろん、様々な健康リスク等が起こることがわかっています。
・脳・心疾患・過労死のリスクが高まる
・精神障害・自殺リスクが高まる
・その他の過労性の健康障害のリスクが高まる
・業務上の事故やケガのリスクが高まる
(資料出所:長時間労働者の健康ガイド.独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
また厚労省等は、時間外・休日労働時間が増加するほど健康障害リスクが高まる関係を次のように公表しています。
こうしたことも踏まえて、今後、特別条項による法定時間外労働の上限時間やその定め方を法律にも記載するなどの何らかの変更が検討されています。
2. 監督指導・捜査体制の強化
過重労働を防止するための指導と捜査をする体制強化が始まっています。
事業所の監督・指導は、管轄の労働基準監督署が担当するのですが、過重労働になっている複数の支店があって労働者に健康被害のおそれがあるものや、犯罪事実の立証に高度な捜査技術が必要となるもの等に対する特別チーム「過重労働撲滅特別対策班」(通称「かとく」)が平成27年4月から東京労働局と大阪労働局に新設されています。
法改正や監督指導の対象になる話はさておき、社員の健康があって、仕事の生産性が向上し、企業への貢献が期待できますから適正な労働時間管理が求められていると考えています。
*記載内容は、掲載時点の法令等に基づいております。今後の改正動きにご注意ください。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2016/12/07