【人事管理】過労死等の労災補償状況を公表
厚生労働省は、平成28年において、過労死等で労災補償の給付支給を認定した件数を公表しました。前年度と比較した認定件数は、脳・心疾患と精神障害のいずれも微増でした。
1. 公表目的は過労死等の防止
この公表資料は、過重な仕事が原因で発症した脳・心疾患やで発症した状況や、仕事による強いストレス等が原因で発症した精神疾患の状況について取りまとめたもので、厚労省は平成14年から毎年公表をしています。資料には、労災給付の認定と過労死の件数等が含まれています。
この資料の「過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条に定義されており、原因が業務に関連したもので、
① 過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡や疾患
② 強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡や精神障害
が、該当します。
2. 脳・心疾患に関する労災補償は微増
① 請求件数は、825件で前年比30件の増加でした。
② 支給決定件数は、260件で、前年度比9件の増加となり、うち死亡件数も11件増の107件でした。
③ 支給決定数の多い業種をみると、「輸送・機械運転従事者」90件、「専門的・技術的職業従事者」30件、「生産工程従事者」27件の順でした。
3. 長時間労働と脳・心疾患の発症リスク
今回は脳・心疾患について、事業主は社員の健康管理と発症リスクを回避するめに事業主に課せられている取り組みを紹介します。
時間外と休日労働時間(以下は、時間外等といいます。)が長くなるほど、業務と脳や心疾患の発症との関連性が高くなると言われています。厚生労働省は、月間の時間外と休日労働時間の合計が、45時間を超えると健康障害リスク徐々にが高まるとしています。
そしてさらに月に100時間を超える場合、または2~6月平均で月80時間を超えると非常にリスクが高いとしています。
そもそも、時間外等 を命令するには、時間外等の36協定を締結し届け出をする必要があります。現在は、「労働時間の延長の限度等に関する基準」というものがあり、月では45時間以下にすることが指導されています。その45時間を超えると、徐々に業務と脳や心臓疾患の関連性が高くなると言われています。
加齢によるものや、生活習慣によるもの以外にも長時間労働は健康に影響を及ぼすということを、改めて認識したいものです。
4. 長時間労働の医師による面談
労働安全衛生法では、脳や心臓疾患の発症を予防するために、月に100時間超の時間外と休日労働の実績があって疲労の蓄積を自覚する労働者から申し出があれば、医師による面談を実施することを事業主に義務付けています。
また、面談の対象にならない労働者についても、脳や心臓疾患の発症を予防する観点から、医師の面談やこれに準ずる対策を講ずるよう努力が求められています。
面談を必要とする時間の基準値は、時間外と休日労働の合計であることに注意が必要ですし、社員の健康管理は、事業活動の基本であって大切なものです。
*制度や報道発表の詳細は厚生労働省ホームページをご覧ください。
・長時間労働者への医師による面談について 厚生労働省等のパンフレット
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/08.pdf
・平成28年度「過労死等の労災補償状況」のページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000168672.html
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2017/07/31