【人事管理】有給休暇の年間5日は取得義務化
国会で成立した働き方改革法案の解説3回目の今回は、年次有給休暇(以下、有給休暇といいます)の年間5日取得義務化についてです。
1.改正法の概要
有給休暇を年間10日以上付与している社員対して、5日間については、毎年時季を指定して与えなければならないことになり、労働基準法が改正されます。
これには、罰則規定が付いており、守らない企業には30万円以下の罰金が課せられます。
施行日は2019年4月1日です。
2.現在は付与する日数のみに定めがある
現行において有給休暇は、継続して6か月の間に8割以上勤務した社員に対して、10日を付与しなければならず、その後1年経過する日(この付与する日を以下は、基準日といいます。)に法令で定められた日数を付与することになっています。
社員は、付与された日数の範囲内で実際に取得する日を決めて請求しますので、取得するか否かは社員の判断になっています。社員が年休の取得する日を指定した場合、その年休取得により事業の正常な運営が妨げられるときには、使用者は年休取得を拒否する権利(時季変更権)があります。
または、現在の労働基準法では、労使が協定をしてあらかじめ有給休暇の取得日を割り振る有給休暇の計画的付与制度もあります。
このように取得されている有給休暇は、統計資料(*)によると概ね半分の49.4%が取得されており、取得日数は9日です。よって統計上では現在の取得日数は、改正後に最低でも取得することになる5日を超えていますが、その取得状況には企業や個人間でかなり差があると思われます。
3.改正後は取得する日数が少なくとも5日に
法改正後は、事業主は有給休暇を付与する基準日から1年ごとの期間に各社員に5日間については、いつ取得してもらうか取得する日を指定しなければなりません。ですから、現状で有給休暇の取得率が低い企業でも、5日以上を取得することが実現します。
そして、この条文には、例外的取り扱いが付け加えられており、労働者が自ら取得する時季を指定した場合と、労使協定によって計画的付与制度を使って有給休暇を与えることで5日を超えて取得しているならば、法改正によるところの事業主(会社)が5日間について毎年取得する時季を指定する必要はないとしています。
【施行後の実務】
改正後の規定が具体的に対象になるのは、2019年4月1日です。
いずれかの方法で、年間10日以上付与している社員が5日間以上の取得をするようにしなければなりません。場合によっては就業規則の改定や新たな労使協定が必要になります。
●対象の労働者全員が自主的に5日間以上を取得する
●労使の話し合いで計画的付与制度を使って取得をする
●会社が個人ごとに取得する時季を指定する
(*)参考資料年次有給休暇の取得状況
(資料出所)厚生労働省:平成29年就労条件総合調査の概況より。
平成28 年(又は平成27 会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数
を除く。)は労働者1人平均18.2 日。そのうち労働者が取得した日数は9.0日で、取得率は49.4%となっている。
取得率を企業規模別にみると、1,000 人以上が55.3%、300~999 人が48.0%、100~299 人が46.5%、30~99 人が43.8%となっている。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/07/25