【労働時間管理】フレックスタイム制は3か間運用が可能に
国会で成立した働き方改革法案に関連して解説4回目の今回は、「フレックスタイム制の精算期間が3か月以内に延長可能になる」ことについてです。
1.改正法の概要
フレックスタイム制の改正は、もともと2015年4月に国会に提出された法案でした。それが今回の働き方改革関連法案による労働基準法の改正に盛り込まれ、成立しました。
現在のフレックスタイム制は、労使協定をして導入することができ、労働基準監督署への届出は義務付けられていません。ただし、精算期間は1か月以内となっています。
そこで、改正後は、労使協定をして労働基準監督署への届出することと、就業規則等に記載することで、精算期間を3か月まで延長できるようになります。繁忙月の翌月の最大2か月間を通じて労働時間を管理することが可能になります。
2019年4月1日施行です。
2.フレックスタイム制の精算期間を延長するメリット
フレックスタイム制は、労働の開始時刻と終業時刻を労働者が自立的に選択できる制度ですが、たとえば、精算期間の3か月の始期を繁忙月にすると、最初の1か月で長くなった労働時間を翌月や翌々月の労働時間を短縮することで、業務に繁閑がある職場の総労働時間を削減することができます。
3.時間外労働の実態によって左右される割増賃金の支払事務
フレックスタイム制をすでに導入している企業では精算期間を長い期間に変更するか、また、これから検討する企業では、精算期間の長さをどれくらいの期間にするか検討することになります。
ただし、時間外労働が長い企業では、精算期間を3か月まで延長すると管理が煩雑になり1か月等のほうが運用しやすいこともあります。よって、実態に合わせて制度を設計する必要があります。
精算期間を3か月とした場合、まず割増賃金の支払は、3か月に1回になります。社員も労働時間の調整がしやすく、割増賃金支払額の削減につながる可能性があります。
しかしながら、長時間労働が見過ごされることを懸念して、改正法では、精算期間内の1か月ごとに1週平均50時間を超えた労働時間については、各月ごとに割増賃金を支払うことも要件になりました。
これに加えて、時間外労働が月60時間を超える時間には、50%以上の割増賃金率を支払うことが義務付けられていますから、フレックスタイム制においても同様に割増率を50%以上で支払うことになります。(ただし、中小企業における割増賃率は、現在猶予期間中で2023年4月4日から割増率の引き上げが義務になります。)
また、長時間労働者への医師面談も考慮しなければなりません。週40時間を超えた労働時間が月に80時間を超えるなど長時間労働者に対して医師が行う面談は、フレックスタイム制適用の社員も当然該当になります。最長3か月間で労働時間が調整できるといっても、繁忙月の集中した長時間労働は避けられるように調整が必要です。
【施行後の実務】
改正後の規定が具体的に対象になるのは、2019年4月1日です。
●フレックスタイム制導入は、労働者が始業時刻と終業時刻を自立的に決定する等要件があり、導入の際には特徴をよく把握し、所定の項目を就業規則等に定め、労使協も必要です
●精算期間を1か月超にする場合、割増賃金管理が煩雑にならないか労働時間の実態と制度を確認必要があります
●精算期間を1か月超にする場合、労使協定は労働基準監督署へ届出が必要です
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/08/10