【人事管理】有給休暇の年間5日は取得義務化~その続き
国会で成立した働き方改革法案の解説5回目の今回は、年次有給休暇(以下、有給休暇といいます)。の年間5日取得義務化の続きです。
1.改正法の概要
以前のコラムで、有給休暇を年間10日以上付与している社員対して、5日間については、毎年時季を指定するなどして与えなければならないことになり、これには、罰則規定があって、守らない企業には30万円以下の罰金が課せられ、施行日は2019年4月1日であると書きました。
その後、いくつかの企業人事部門で有給休暇の管理をしている担当者に今後の対応策の検討を進めている中で、傾向がみえてきましたので、お伝えしたいと思います。
2.改正法への取り組み
筆者が訪問した企業は、社員5人から100人までの少人数の会社です。検討の主な当時者は、人事部門または、小さい会社では社長が判断と実務を運用している会社もあります。
各社の担当者は、有給休暇の年間5日取得が義務化に改正されることを、おおむね知っており、説明のアポイントもスムーズ進んでいます。しかし、必要性を実感していた企業もあれば、どちらかというと後回しにしたいと考えていた企業もあり、温度差があるのも事実です。
法改正の内容自体は、年間5日取得が義務になることですから、説明自体は簡単にすみ理解しやすい改正内容のようです。また、やや消極的な企業へは、働く人の労働環境を整えてよい人材の定着と確保につなげることを目的において取り組むように説得をしています。
訪問をすると、まず準備していただいていた出勤簿と有給休暇の取得管理簿等を確認し、次のどの方法をとるかという話を進めていきます。
●対象の社員全員が自主的に5日間以上を取得する
●労使の話し合いで計画的付与制度を使って取得をする
●会社が個人ごとに取得する時季を指定する
3.取得状況と対応の方向性
現在の取得状況は、2とおりあるように思います。
A.取得率は全体ではかなり高く6割を超えているが、全社員の1から2割ほどの社員は年間取得日数が5日に達していない企業。取得は1日だけという社員がいるケースもめずらしくありません。
B.社員が休みたいという日や、短時間の遅刻早退も欠勤控除等をしておらず、「ああ休んでいいよ」という社長の承認が全てで、総じて個別に対応しているため有給休暇の日数管理は特にしていない。
どちらも、社員全員でみるとばらつきがあって、「全員5日取得」のラインを満たしていません。そうすると、計画的付与を導入していない会社には、これを機に導入の提案をします。筆者は、どちらかというと、積極的に取り入れるだろうと想定をしていましたが、2つの理由で導入に至らないでいます。
【計画的付与制度を導入しない理由】
1.すでに100%近く取得をしている社員が何人かおり、特に子育て中の社員や若い社員にその傾向が高い。よって年間の数日を労使協定で決めた日に休むとなると、個人ごとに時季を指定できる日数が減ってしまい、家庭生活や長期旅行の計画等に支障がある。
2.2019年は、天皇の退位または即位の日等の休日扱いについて閣議決定が定まっておらず、計画的付与制度で連休を計画しようにも、見通しが立たない。もし最長で4月27日から5月6日までが所定休日になれば、他の時期に計画的付与をすることが考えづらい。
以上のような状況になっており、計画的付与よりも個人ごとに時季を指定して1年の終り1~2か月前に取得が進んでいない人には、会社から取得を促すか、取得日を指定する方法で取り組むことに落ち着きつつあります。
これにあわせて、出勤簿の出勤退勤時刻を正確に記載することと、これまで労働をしていなくても賃金を控除せず、「社長が認めたから休んでいた日」は、有給休暇の取得と管理していくこと、および有給休暇をしっかり取得できるように、仕事の進め方を考えていくことを上部からのメッセージとして社内に告知することを薦めています。また必要であれば賃金体系を見直す必要があると考えています。
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/08/27