【人事管理】地震や災害時の社員対応
この度の北海道地震をはじめ、台風・大雨による災害により、被害に遭われている皆様にお見舞いを申し上げます。
今回は、これから想定される地震や台風などの自然災害で、社員の帰宅が困難になると想定されるときの対策について考えたいと思います。
1.台風の進路予報で交通の乱れが予測されるとき
筆者が活動している首都圏は、この夏の台風で暴風雨圏に入たことがあり、その際には帰宅時の交通機関が止まってしまうことが予測されました。気象庁や交通機関のホームページで詳しい情報を得た企業では、社員の終業時刻を切り上げて、帰宅命令を出したようです。
ある企業の総務部門に聞いたところ、交通機関の運行停止や、ダイヤの混乱が予測された電車路線地域の社員に限定して、終業時刻を切り上げて帰宅させたと話しておられました。情報を的確に入手して対応をされたと感心しました。
また当日の企業の対応が気になりましたので、後日ツイッター等を見たところ、多少意外な書き込みがありました。女性だけ午後の早い時刻に帰宅命令が出たらしい会社では、「女性だけ帰宅させられた。女性だから弱いと決めているこの会社でこれからも働くと思うと、気持ちが下がる。」とつぶやいていました。もし、そうしたつぶやきを考慮すると、性別で判断するのではなく、体力で配慮を要する社員は帰宅するように指示を出すことも必要だと思いました。
2.地震で帰宅に危険が予測されるとき
地震は台風と違って、予知できる精度が限られており、もしもの時の対応を事前に企業で決めておき、決めている計画の期的にシミュレーションや、避難訓練をすることが必要です。
政府が首都圏の地震による帰宅者対策としてよびかけたものとしては、「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」の報告があります。(平成24年9月10日)
これは、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響により首都圏での交通機関の停止などにより約515万人の帰宅困難者が発生したことを踏まえ、今後の首都直下地震発生時を想定して帰宅困難者等の対策を検討した報告書です。
一斉帰宅制御の基本方針<基本的考え方>(*報告書7ページ)では、首都直下地震発生直後は、救助・救急活動、消火活動、緊急輸送活動等の応急活動を迅速・円滑に行う必要があり、この基本原則を実効あるものとするため、各企業等に一斉帰宅抑制を促す。としています。
そして、「企業等は首都圏の交通機関が運行停止となり、当分の復旧の見通しが立たない場合には、事業所建物や事業所周辺の被害状況を確認の上、従業員等の安全を確保するため、従業員等を一定期間事業所に留めておくよう努める。そして従業員等が事業所内に待機できるよう、3日分の必要な水、食料、毛布の備蓄に努めることとする。」としています。
平成23年3月の東北地方太平洋沖地震から7年半が過ぎた今、備蓄品の使用期限や社員の安否連絡方法などを改めて再確認しておく必要があると思います。
また、社員に一定期間事業所内に留まるように命令を出したにもかかわらず帰宅を開始した社員を制止できるか否かについては、業務が終了している場合は事業所内に留まるように強制できる根拠がとぼしく、あくまで要請であるととらえるのが妥当です。
一方で、例えば会社の設備や機械等に被害が生じ、復旧作業に従事するように業務命令を出しても、社員が家族等の安否を確認する必要性を強く感じ、帰宅を始めたとします。ではその社員の行為に対して業務命令の実行を優先させ帰宅をさせないようにできるかどうかは、社員が帰宅する背景に高度な必要性があれば、難しい場合が多いように考えます。
*「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」の報告書はこちらのURLでご覧になれます。
http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/kitaku/pdf/saishu02.pdf
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/09/14