【労働時間管理】過重労働対策 政省令について
働き方改革関連法の政省令の中で、労働時間について気になっている点を取り上げたいと思います。
1.月80時間を超える時間外労働には面談を
2019年4月1日から、1週40時間を超える労働時間が月80時間を超える一定の労働者には、医師の面談を実施することになります(安全衛生法66条の8 1項、同規則52条の2)。
具体的には次のいずれにも該当する労働者が対象になります。
①休憩を除いて1週間あたり40時間を超えて労働させた時間が月80時間を超えた
②疲労が認められる
③当事者の労働者から医師の面談指導の申し出があった
法律が改正される前は、上記①の時間は月100時間を超えたとき実施することになっていましたら、過重労働を防ぐ対策を強化する趣旨であることは言うまでもありません。
そしてこの改正は、雇用する労働者が1人以上いるすべての事業主に適用されて、対象者は管理監督者を含む労働者全員であり、1週40時間を超えている時間の1か月80時間を超えるかどうかということから、当然、所定休日や法定休日の労働時間も含めて数値の管理をするということが注意点です。
そして、そもそも労働者は自身の労働時間を把握していなければ医師の面談指導を申し出られないため、事業主は月80時間を超えた労働者に通知をしなければならない(規則52条の2.3項)ことになります。働き方改革関連法の中でも、これまで注目をされていない傾向にある改正ですが、実際に取り組む体制が必要になっています。
2.労働時間の適正把握
一連の長時間労働防止を実施するには、まず労働時間を正確に把握する必要があります。
労働時間と健康を把握し医師の面談を実施する等のために、労働の時間を把握する対象は、労働者全員です。やや繰り返しになりますが、管理監督者等の労働時間管理から除外されていた労働者も労働時間をきちんと記録することになります。
また、適正な労働時間の把握方法は政省令で定める(安全衛生法66条の8の3)とされていましたが、タイムカードによる記録、パーソコン等の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適正な方法で行い、その記録は3年間保存しなければならない(施行規則52条の7の3)とされました。
尚これも言うまでもありませんが、労働時間を適正に把握したのちには、労働基準法に沿って適正な割増賃金の支払を行うことになります。
3.産業医の役割強化
現在すでに常時雇用する労働者が50人以上の事業場は、産業医を選任する義務があります。産業医を選任している事業場は、働き方改革関連法によって、2019年4月1日から、1週40時間を超える労働時間が月80時間を超えた場合には、産業医へ通知することが義務になります(安全衛生法13条4項、規則14条の2.1項2号)。
産業医を選任している事業場で、長時間労働の労働者から申し出があれば、医師の面談を実施しなければなりませんし、事業主は、その内容について産業医の意見を聞いて労働者に必要な措置を講じます。
また、産業医は必要があれば事業主に対して勧告をすることになります。事業主は、受けた勧告内容と措置を行った記録を3年間保存する義務があります(則14条の3.2項)。
過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場で労働基準関連法令違反が認められるものについては、司法処分を含めた厳正な対応をすることになっています(H18.3.17基発0317008*注)し、大切な社員の健康管理のために、法改正までに対応を準備する必要があります。
*注) H18.3.17基発第0317008号 過重労働による健康障害防止のための総合対策について(通知は法改正前のものであるが、基本的な対策は引き継がれると思われます)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/dl/ka060317008a.pdf
厚生労働省は働き方改革関連についてホームページを随時更新していますので参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/11/15