■仕事の報酬はお金だけでしょうか？

いい仕事ができるようになると、どんな報酬があるのか。
世間一般では「仕事の報酬といえばお金」であり、どれだけの成果でどれだけのお金という報酬があるかを天秤にかけて考ます。
しかし、仕事を通じた報酬はそんな単純なものでしょうか？多摩大学大学院教授の田坂広志さんのお話を参考にすると、お金も含めて６種類あると思います。

第一に、一番わかりやすいお金です。
しかしお金のために働く、お金のために自分の人生の多くを占める職業人生を費やす。というのは寂しくはないでしょうか。

第二に、働き甲斐のある仕事を得ること。
まさに、「仕事の報酬は仕事です」「できる人に仕事は集まる」とも言います。 自分は営業現場が長かったですから、目標の上がることの誇らしさ、一番大きい目標を持つことのプライドが存在しました。量だけではなく、仕事の質。自分でワクワクする仕事が持てる。お客様から感謝される仕事というのも、自分自身に責任がわきます。私も「誰からも伝説のように語り継がれる作品」ともいえる仕事も残すことができました。

第三は職業人としての能力が上がること。
プロとして自覚できる専門分野を持つ。高い能力、キャリアがあればどこでも仕事ができる、多方面から声がかかるというのも報酬として大きいものです。

そして第四には役職・地位がついてくる。
実力が認められれば、より影響力のある役割・責任がめぐってきます。

ここまでは誰にでも見えやすいものです。 ここからは、その時点ではなくあとから感じられることが多いのですが、

第五には人間性です。
人としての成長です。仕事を通して正しい道を歩んできた人、厳しい仕事から逃げずに乗り越えてきた人には、周りの人からも一目置かれるような人間味がついてきます。 仕事を通じて自分が磨かれ、深みや落着き、道理が身についてきます。私はリクルートで１５年過ごしましたが、仕事の厳しさと密度が全く違ったのだと思います（働く時間も長かったですが）。そのことがリクルート出身者として、即戦力で活躍している人たちが多いと言われる、強さの源泉だと思います。

最後の第六の報酬は、周りの人間との関係性。戦友ともいうべき、良き仲間、良き後輩を得られること。
これはリクルートの場合、早くから感じられるかもしれません。なぜなら、早くから卒業して外に出て、そこでも先輩、同期、後輩との結びつきを実感できるからです。 とくに後輩は、苦しいときに一緒に付き合い乗り越え、成功体験を共有している先輩にずっと付いていく。これはお互いにすごい財産でしょう。

■リクルートのDNAによる結びつき

なぜ、リクルートの出身者が仕事の報酬として、これらの６つの報酬を受け取れるのか。いちばん大きいのは、若くして（だいたい40歳前後で）卒業することで、組織内の権力関係ではない、純粋な人間性のつながりをつくって外に出られるからだと思います。
一つの組織に長くいると、どうしても権力関係をベースにした形式的な人間関係になりがち。 そうではなく純粋な人間性で認め合えることで、一緒にいた時間の長さではなく中身の濃さで強くつながれるのではないでしょうか。 外に出てから仕事を共有していたり、一緒に複数の会社をつくったり、関係性が深く維持されます。これらは、リクルート出身者のDNAともいえる安心感がそうさせるものと思います。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

仕事の報酬をお金という風に簡単に考えない。
深く考えた働き方をすることによって、一生につながる財産を得られ、充実した人生を得られることになるのではないでしょうか。※

※田坂広志氏著「仕事の報酬とは何か」参照
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

（和田）