【人事管理】改正時間外等協定届について
1.36協定届改正の背景と適用日
わが国の総労働時間は、常用労働者全体を長期間の傾向で見れば、時間短縮が進んでいますが、経団連が行った時間外労働調査(*)では、1か月の時間外労働が45時間を超える労働者は17%とされており、個人別に見ると労働時間が長い労働者がいることがわかります。
また、長時間労働は過労死の危険性が高まることや、女性や高齢者が働きやすい環境を整えて労働力を確保していく重要性が提唱されているのはご承知の通りです。
こうしたことから、今回の労働基準法の改正は、法定労働時間外に上限時間を設けることになりました。具体的には、現在の36協定等を定めている第36条を改正することで行われ、省令等によって36協定届の様式と協定が必要な項目が示されることになりました。
新しい様式での協定と届出が義務になるのは、協定の全期間が、2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)以後の期間を対象にする協定から適用されます。
(*)一社)日本経済団体連合会2017年労働時間等実態調査集計結果より:1カ月の時間外労働が45時間超~60時間の労働者は10%、60時間超~80時間は6%、80時間超は1% 。ただし時間外労働には所定労働時間を超え1日8時間以下の労働時間も含めた回答を集計しており、法定労働時間超で集計した場合の月間時間外労働が45時間を超える労働者は少なくなります。
2.協定をする項目
労基法の改正では、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な項目は、厚労省令で定めるとしていましたが、2018年9月7日に厚労省令が交付され、下表の通りとされました。特別条項の厳格化にかかわるものとして③と⑤が新しく加わりました(表中の着色項目)。
厚生労働省令で定める協定事項
(このほかにも労基法第36条2項の協定事項も含めて協定が必要) |
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① | 協定の有効期間 |
② | 1年間の限度時間を協定し、その1年間の起算日 |
③ | 法定外労働と休日労働を合算した時間数は1カ月100時間未満であること。および当該月を含め2~6カ月平均で1カ月80時間以内を満たすこと |
④ | 限度時間を超えて労働をさせることができる場合 |
⑤ | 限度時間を超えて労働をさせる労働者に講ずる健康確保措置 |
⑥ | 限度時間を超えた労働時間に対する割増賃金の率 |
⑦ | 限度時間を超えて労働をさせる場合の手続き |
これらのように労基法第36条と厚労省令で必要事項が規定されることにより、36協定届の様式9号も改正されます。
今回の省令によって、新たに新設された「法定外労働と休日労働を合算した時間数は1カ月100時間未満であること。および当該月を含め2~6カ月平均で1カ月80時間以内を満たすこと」は、様式第9号の最終行にチェック欄が新設されました。記載例の注意書きによると、「この記載がないと有効な協定届になりません。」と表記されていますので、洩れのないように協定を進めることが必要です。
また、様式第9号の右上には労働保険番号と法人番号の記載欄も加えられています。
尚、記載例の注意書きよると、必要事項の記載があれば様式第9号以外の書式でも届けができるとされております。
(以下の図をクリックすると厚労省の36協定届(一般条項)記載例へジャンプします。)
厚生労働省は働き方改革関連についてホームページを随時更新しており、36協定届の各種様式、フレックスタイム制の協定届の様式等のダウンロードもできますので参照してください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2018/11/27