【人事管理】副業・兼業を導入するか
働き方改革関連法は2019年4月から段階的に施行が始まりました。法令の改正ではありませんが政府が進めるもののひとつに、副業・兼業を持つことがあります。
1. 企業の意識は
副業・兼業に対する企業の意識について調査結果を見てみると、正社員に対して容認または推進している企業は全体の28.8%で、あまり積極的でないようですが、前年より5.9ポイント上昇しました。(株式会社リクルートキャリア 兼業・副業に対する企業の意識調査 2018年 回答数47社)
禁止している企業が回答した「兼業・副業を禁止する理由」の多数回答は、社員の過重労働の抑制が44.8%、労働時間の管理把握が困難なため37.9%、情報漏洩のリスク34.8%となっています。
一方で、容認・推進している企業の多数回答は、特に禁止する理由がないため42.5%が多く、従業員の収入増につながる38.8%、人材育成や本人のスキル向上につながる24.2%となっています。企業が副業・兼業を容認する理由を見ても、本人のスキル向上のような積極的な理由がそれほど多くなく、企業側が積極的に導入するには、今後環境が整うことや社会の認識の変化が必要なようです。
2. 従業員の意識は
副業兼業に関して管理職を対象にした意識調査があります。「会社の許可があれば副業・兼業に取り組むか」という質問には52%が取り組むとしています。しかし、「平日の労働時間が2時間減るとしたらその時間をどう使うか」という質問に対しては、帰宅して過ごす41%、趣味やスポーツ30%、自己啓発15%が上位で、「副業・兼業をする」と回答した人は5番目で6%にとどまりました。また、休日に自由に過ごせる時間が増えた場合に「副業・兼業をする」と答えた順位も、5番目で5%にとどまりました。
調査結果からは、自由な時間が増えても副業・兼業を考える人は少ないようです。ただし、管理職を対象にしており、一定の収入があるため消極的だと考えられる点と、企業側への調査結果も合わせて考慮すると、収入の確保を理由として副業・兼業をすることが浸透するようにも思えます。
政府が進める充実した職業生活のためや、社会保障の支え手を増やすための副業・兼業のイメージとは違っているようです。
3.社員が複数の事業所に勤務するようになったら
副業・兼業が一般的に取り入れられるようになれば、労務管理や社会保険などで行わなければならないことがあります。
時間外労働については、労働時間を通算して、割増賃金を払わなければなりません。例えばA社とB社の2社で働く場合は、割増賃金を支払う義務がA社、B社のどちらになるか問題になります。通常は、その労働者と後から労働契約をした事業主が割増賃金を支払います。ただし、A社で4時間、B社で4時間の労働契約をしていて、A社はB社で4時間働くことを知りながら、A社が5時間勤務させた場合は、A社は1時間に対して割増賃金を支払う義務があります。(有泉了「労働基準法283頁」)
また、社会保険の現在のルールでは、社員が同時に複数(2か所以上)の適用事業所に使用されることになり、複数の社会保険適用事業所で健康保険と厚生年金保険の被保険者に該当することがあります。そうすると管轄する年金事務所又は保険者が複数になることで社会保険については、「健康保険 厚生年金保険 被保険者 所属選択 二以上事業所勤務届」という手続きが必要になります。
社会保険の被保険者になるかどうかは、事業所ごとにその所定労働時間等によって判断します。
よって、例えば2社に勤務して、A社でもB社でも被保険者の要件に該当し、同時に複数の適用事業所で被保険者になるために管轄する年金事務所または保険者が複数となる場合は、被保険者が届出を行って、年金事務所または保険者のいずれかを選択します。
こうした手続きがあることを知っておきましょう。
社会保険について詳しくは、日本年金機構のページでご確認ください。
被保険者になる要件は
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/jigyosho/20150518.html
複数の事業所に雇用されるようになった時の手続きは
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20131022.html
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2019/04/15