【人事管理】労基法等違反による企業名公表
厚生労働省は、違法な長時間労働があった企業や過労死または安全衛生法違反をした企業について企業名を公表しています。2019年3月31日付けで2018年度の公表事案をホームページに掲載しました。
この公表の目的は、事実を広く社会に情報提供することによって、他の企業でも遵法意識を啓発することで、法令違反の防止を徹底するもので、対象となった企業に対する制裁として行うものではないとしています。よって、企業名は、おおむね1年以内に削除されますし、掲載する必要がないと認められた企業については、速やかにホームページから削除されます。
しかしながら、社名公表の対象になると、広く情報が拡散される可能性があるため企業にとって大きなリスクになります。また、公表されるまでの過程において、従業員を違法な労働環境の下で使用していたのですから、本来の労働契約が成り立っていなかったことにより失ったものは大きく、法令を遵守する労務管理が必要であることは言うまでもありません。
1.指導と企業名公表の概要とは
①違法な長時間労働や過労死等が複数の事業所で認められた企業の幹部に対しては、本社を管轄する労働基準監督署長から、是正・改善を図るように指導が行われ、その後実際に是正・改善が行われたことの確認がされます。
②再度違法な長時間労働等が認められた企業又は長時間労働を原因とした過労死を複数の事業場等で発生させた企業の経営トップに対して、本社を管轄する局長から指導を行うとともに企業名が公表されます。
2.指導及び企業名公表の対象になる企業とは
厚労省は、複数の事業場を有する社会的に影響力の大きい企業を対象に公表するとしており、概要を以下にまとめました。内容を見てみると、過労死等の労災保険給付の対象になった被災労働者に長時間労働があり労働時間関係の違反がある場合は、厳しい対応をすることが予定されています。
労働法令は、良好な労使関係を築く最低限の基準が定められており、企業の運営に欠かせないものであるとともに、労働者の健康と生命を守る重要な法令ですから、しっかり守らなければならないと思います。
労働基準監督署長による指導 |
概ね1年程度の期間に2か所以上の事業場で下記のアからウのいずれかに該当するとき
ア 1事業場で10人以上または4分の1以上の労働者について ① 1か月80時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ ② 労基法32・35・37・40条の違反があるとして是正勧告を受けている イ 過労死等の労災保険給付の対象になった被災労働者に ① 1か月80時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ ② 労働時間関係違反の是正勧告または指導を受けている ウ ア又はイと同等に重大・悪質である違反がみとめられる |
労働局長による指導と企業名公表 |
下記のア又はイのいずれかに該当するとき
ア 労基署長の監督指導等を受けている イ 概ね1年程度の間に2か所以上の事業場で下記(ア)(イ)いずれかに該当する実態が認められ下記の(イ)が1か所以上の事業場で認められる (ア)監督指導において、1事業場で10人以上または4分の1以上の労働者について ① 1か月100時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ ② 労働時間関係違反があるとして是正勧告を受けている (イ)過労死等の労災保険給付の対象になった被災労働者に ① 1か月80時間を超える時間外・休日労働が認められ、かつ ② 労働時間関係違反の是正勧告または指導を受けている |
詳しくは厚労省のホームページでご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html
【コンサルタントプロフィール】
DATE : 2019/05/07